有責配偶者からの離婚請求
有責配偶者というのは、離婚の原因につきもっぱら責任のある配偶者のことを言います。例えば、夫が不貞行為や暴力を振るっておきながら、婚姻関係が破綻したから、妻に対して離婚請求をする場合などです。
不貞行為をされた妻や暴力を振るわれた妻から夫に対して離婚請求するのは分かりますが、もっぱら責任のある夫から離婚請求をした場合は、ちょっと違うんじゃないかと感覚的に理解できると思います。
しかし、有責配偶者からの離婚請求であっても、長期間別居状態が続いている等の状態が生じた場合は、そろそろ離婚を認めても良いのではないか、という考えも出てきます。
最高裁は62年9月2日判決において、「①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、②その間に未成熟子が存在しない場合には、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、有責配偶者からの請求であることの一事をもって許されないとすることはできない」旨を判示しました。
この最高裁判決以降、各要件が比較的緩和されて、いわゆる破綻主義(婚姻関係が破綻しているのであれば、離婚を広く認めても良いという考え)に傾いているのが判例の傾向です。
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには以下の3つの要件を検討する必要があります。
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと。
同居約23年、別居約8年で離婚を認めた事案(最判平成2年11月8日)や同居約22年別居約6年で離婚を認めた事案(東京高判平成14年6月26日)もあります。
逆に同居約21年、別居約9年でも離婚を認めなかった事案(福岡高判平成16年8月26日)もあります。
②夫婦間に未成熟子が存在しないこと
ただ、未成熟子がいる場合でも離婚請求を認めている事案もあります。
最高裁平成6年2月8日判決でも、「現在では,上告人と被上告人間の4人の子のうち3人は成人して独立しており,残る三男丁は親の扶養を受ける高校2年生であって未成熟の子というべきであるが,同人は3歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており,被上告人は上告人に毎月15万円の送金をしてきた実績に照らして丁の養育にも無関心であったものではなく,被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると,未成熟子である丁の存在が本件請求の妨げになるということもできない。」と述べて、未成熟子が存在していても離婚請求を認めています。
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと
この要件は、個々の事案に照らして、該当するかどうかを詳細に検討する必要があるところです。
弁護士 李 尚昭
